図書館法に関する法教育(授業内容)
図書館法に関する授業内容を以下で公開いたします。
★ご注意いただきたいのは実際の授業はこの通りには話していません。
適宜要約しながら話しています。その点のみご注意下さい。
授業内容
第4回『北区法教育プロジェクト』授業原案(「図書館法」編)
『きまりがあるのは何のため?』~きまりの意味を考えてみよう!
平成24年1月26日当日使用版
東京都行政書士会北支部 第4回北区法教育プロジェクト授業案担当 山賀良彦
一、はじめに<自己紹介>
1.はじめまして。行政書士の○○です。
行政書士は『頼れる街の法律家』といわれているように法律を扱う仕事をしています。
そこで、今日は皆さんと一緒にきまりについて考える法教育の授業を行いたいと思います。
よろしくお願いします
2.後ほどグループで話し合ってもらいますが、そのとき私以外の行政書士にも一緒に参
加してもらいます。それでは、代表者の方、あいさつをお願いします。
3.『はじめまして、行政書士の○○です。
後で皆さんと一緒に『きまり』について考えますので、今日はよろしくお願いします。』
<参加する行政書士代表のあいさつ:短く>
二、<図書館法について。図書館法を知る。>
1.それでは、早速はじめましょう。
今日は、先ほど皆さんにパンフレットをお配りしたように、図書館のきまりを考える法教育の授業を行いたいと思います。
皆さんは図書館を利用したことはありますか?
冬休みで本を借りたりした人も多いかもしれませんね。
図書館では、誰でも自由に本を手にとって見て借りることが出来ますよね。
でも、「なんで図書館では誰でも自由に本を見たり、貸りたりすることができるんだろう?」って思ったことありませんか?
図書館だから当たり前?
それじゃあ、「なんで図書館はタダで貸してくれるんだろう?」って思ったことありませんか?
これも図書館だから当たり前?
2.それでは、皆さんにお渡ししたプリントを見てください。
図書館法って書いてありますね。
実は、図書館には「図書館法」っていうきまりがあるんです。
プリントの図書館法2条の下線がひいてあるところを見て下さい。
そこには、「『図書館』とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」って書いてありますね。
難しい言葉で書いてありますが、「誰もが、調べものをして情報を得たり、読書を楽しんだり、気分転換したりするために、利用することが出来る場所ですよ。」、
そして、「図書館はそのために、本や雑誌など様々な資料・情報を集めて、整理・保存してある場所ですよ。」ということが書いてあります。
次に、17条を見てください。
そこには「『入館料』『図書館資料の利用』の『対価』を『徴収してはならない。』」って書いてありますね。つまり、「図書館は、入館料や本の貸出などでお金をとってはいけません。」って書いてあるんです。
3.そう、「図書館は、誰でも、無料で、自由に、調べ物をしたり、楽しんだりするために、好きな本や雑誌を手にとって見て借りることができる」という皆さんにとって当たり前と思えることが図書館法という法律に書いてあります。
北区の図書館も含めて日本全国の図書館はこの図書館法に基づいて活動しています。ですから、図書館はそのために様々な工夫をしています。
三、<図書館の工夫:いくつか例示できれば良い。>
1.皆さんにお配りした青い「北区の図書館案内」を見てください。
<図書館はあかちゃんからおとなまで、どなたでも自由に入館、閲覧、貸出などの利用ができます。>と書いてありますね。
そう、誰でも、もちろん、赤ちゃんでも図書館カードを作れるんですよ。知っていましたか?
ですから、赤ちゃんのための布の絵本なんかもあります。<→布の絵本提示>
もうすこし大きい子のための絵本や紙芝居もありますね。
皆さんに関することで言えば、どこの図書館にもこどもとしょかんがあって、小学生向けの本がありますよね。
さらに、こんな本もあります。見て下さい。
これは、点訳本といって目の不自由な子でも本が読めるような工夫がしてあります。これだとお母さんも子どもに一緒に本を読んであげられますね。
それから、こんな本もありますよ。<マンガや大活字本。>
2.本だけではありませんよ。
例えば、浮間図書館の入口がなだらかな坂になっているのは何のためですか?
そう、足の不自由な方、赤ちゃんを連れた人にもにも利用しやすいためですよね。
新しい中央図書館では、エレベーターがついていたり、本棚も低くなっていて足の不自由な方にも利用しやすくなっています。
他にも、目の前で本を読んでくれる対面朗読サービス、図書館への来館が困難な方へ本を届けてくれるサービスもあります。
3.先ほどお話したように、誰もが図書館を利用することが出来るという当たり前のことが図書館法に書いてあります。
そして、そのことを実現するために、「北区の図書館案内」にあるように赤ちゃんから大人まで誰もが利用できるように、様々な本や雑誌を集めたり、利用しやすいように整理・分類して保存したり、いろいろな調べものの疑問・質問に答えたり、例えば、宿題なんかで図書館の人に本のこと聞いたことがあるかもしれませんね、と、図書館はさまざまな工夫を今もしています。
四、<利用主体であることは何をしてもいいのか?貸出のルールを考える。>
1.それでは、誰もが自由に利用できるからといって、図書館では何をしても良いのでしょうか?<→問いかけ>
例えば、「あとで返すから」と言って、貸出の手続をしないで勝手に図書館の本を持っていっても良いでしょうか?
何か変ですね。みんなが好き勝手に図書館でそれをやったら大変ですね。
もしそうなったら、図書館の人は、コンピュータで検索してある本を借りたいという人にも、貸出中かどうかも、あるのかどうかも、わからなくなってしまいますね。それだと、結局、みんなが図書館の本を利用するときに困りますね。
2.皆さんにお渡ししたカラーのパンフレットを見てください。
開くと左の方に「はじめてかりる人は、カウンターで「利用カード」を作りましょう、二週間かりられます。」という貸し出しのきまりがありますね。
この当たり前に思える貸し出しのきまりは、図書館は誰もが図書館の本を利用できるようにするためという図書館法のきまりを実現するためにあるといえますね。
五、グループ討論
1.ではここで、今皆さんに開いてもらったパンフレットの右下の方を見てください。
まもりましょう、と書いてあるものがありますね。皆さんには、「まもりましょう」の中に書いてあるきまりが何のためにあるのかを考えてもらいたいのです。
そして、それだけではなく、この「まもりましょう」に書いてないことが問題となったらどうしたら良いのかも考えてもらいたいんです。
プリントを開いてください。→プリントを読み上げる。
○前段を朗読<大声を出したり、さわいだりはやめましょう。>
○後段を朗読<ある人が図書館の中でゲームをしています。しかしゲームについては「まもりましょう」に書いてありません。では、図書館の中でゲームをすることについてどう思いますか?>
2.まずは、少しだけ自分で考えてみてください。その後で班で考えてもらいます。
それでは、はじめてください。<→自分で考える時間:2分>
3.それじゃあ、まだの人もいるかもしれませんが、今から班ごとに考えてもらいます。
班ごとになって考えてください。行政書士の方もお願いいたします。
<→討論時間:約6分程度。5分後にまとめるようにアナウンスする。>
4.それでは、発表してもらいます。
班ごとに代表者の方、お願いします。<→以下、順次発表。全部で8分程度>
六、<発表後のコメント、講師の説話>
1.なるほど、いろんな考え方がありますね。
それでは、当たり前のことから考えてみましょう。
図書館は、「誰もが利用できる場所」ですと、図書館法に書いてありましたね。
そうすると、図書館では走り回ったり騒いではいけないということがわかりますね。
あかちゃん、大人、体の不自由な方などいろんな人がいるわけですからね。
ぶつかったりしたら危ないですよね。
2.また、図書館は、「本や雑誌など様々な資料・情報を集めて、整理・保存してある場所」で、
「調べものをしたり、読書を楽しんだり、気分転換したりするために、利用することが出来る場所」
でしたね。
そうすると騒ぐための場所ではないってわかりますね。
3.また、図書館がそういう場所だとするならば、静かにしていれば良いというわけではないですね。
たとえゲームについて書いてなくても図書館はゲームをする場所ではないことが考えられますよね。
4.どうでしょうか?この皆さんに考えてもらった図書館のきまりも、「図書館は、本や雑誌など様々な資料・情報を集めて、整理・保存してある場所」で、「調べものをしたり、読書を楽しんだり、気分転換したりするために、誰もが利用することが出来る場所」ということが書いてある図書館法につながるんですね。
そして、そこからなぜこのきまりがあるのかを考えることが出来ますね。
また、こういうことを知っていると、ゲームのように、たとえきまりやルールに書いてないことが問題になったとしても、図書館はどんな場所かを図書館法などから考えて答えが出せることもありますね。
5.それでは、皆さんにもう一つ質問です。
図書館の中に犬を連れてくることはどうでしょうか?
まもりましょう、には書いてありませんね。良いのでしょうか?皆さんはどう思いますか?
<→問いかけ>
もしペットだったら、図書館にはふさわしくないですよね。図書館はペットと遊ぶための場所ではないですものね。
でも、体が不自由な方が連れている介助犬や補助犬ならば良いって考えられますよね。
七、おわりに<終末>
1.さあ、今日は法教育の授業でしたね。
実は、この「借りる場合には利用カードを作りましょう」や<大声を出したり、さわいだりはやめましょう。>のような当たり前と思える図書館のきまりの意味を「なぜなんだろう」ってその理由を考え、そして、きまりに書いていないことが問題になったときにどうするのか考えるのが、難しい言葉で言うと法解釈といいます。
裁判官や私たち行政書士など法律家はきまりや法律に書いてないことが問題となったときなどに、いまのような法解釈を行っているんです。
今日は法教育の授業なのでこのことを是非皆さんにお伝えしたかったんです。そして、こういう考え方が身に付けられると、きまりに書いていないことにも答えを出すことが出来ます。
今、皆さんはきまりには書いていない、図書館でゲームをすることや犬を連れてくることについて、図書館法の『図書館は誰もが利用できる場所』、『さまざまな情報を得ることのできる場所』、『読書を楽しむ場所』という当たり前と思えることにまでさかのぼって考えることができましたね。
2.皆さんの身の回りには図書館以外にもたくさんのきまりやルールがあると思います。
たとえ当たり前に思えるきまりやルールでも、自分の頭で「なんでこんなきまりがあるんだろう」、「このきまりやルールはどういう意味なんだろう。」ということを自分自身で考えて、その場にふさわしい行動できると良いですね。
3.ところで、さっきから、当たり前のこととして、図書館は誰もが無料で利用できる場
所って言っていますがそれって本当に当たり前だと思いますか?
実は違います。
昔は入るのに有料だったんです。北区の図書館もそうでした。
それどころか最初のうちは自由に本を手にとって見ることも出来なかったんです。
借りることも出来ませんでした。たとえ出来ても有料だったんです。
返却が遅れると罰金を取るところもあったそうです。
子どもの本も今よりぜんぜん少なかったんです。
図書館は一部の人だけのものだったんです。
でもそれが、この図書館法により今のような図書館に変わって行った。
では、法律が出来たらすぐに今みたいな図書館になったと思いますか?
そう、最初はなかなかそうならなかったんです。
今、当たり前のように誰もが自由に利用できるようになるにはいろんな人の努力があったんです。
今、あたりまえと思えることも努力した人がいてあたりまえになったんです。
それでは、今みたいな図書館になるためにその当時力を入れたことって何だと思いますか?
<→問いかけ>
実は、皆さんのような児童に向けたサービスなんです。
『子どもに図書館の本を読んでもらおう。』、『そうすればきっとその子が大人になったら図書館を利用してくれるだろう』と希望をこめて。
4.最後に皆さんにもう一つ、図書館についてご紹介したいことがあります。
<南三陸町図書館の資料を配布。>
これはある図書館のhpからプリントアウトしたものです。
<以下、読み上げ>
『みなさんの南三陸図書館が再開します。いつでもお気軽にお越しください
調べ物があるときに。読書を楽しみに。心を整理したいときに。気分転換に。
図書館は、みなさんの味方です!』
皆さんは南三陸図書館がどういう図書館か知っていますか?
そうですね。東日本大震災で被害を受けたところですね。
その再開を伝えるものです。
このように図書館を再開しようと思ったのはどうしてだと思う?
そうだね、図書館法に書いてある、
また、さっき読み上げた内容にもかいてある知識・情報を提供するためだし、読書の楽しみを提供するため等のためだと考えることができますよね。そして、町の人に大事な復興に関する情報を伝えるためとも言えますよね。
そう、図書館は誰でも自由に無料で借りられる等のきまりは確かに当たり前かもしれない。
しかし、当たり前のために努力した人がいて、はじめて当たり前になるんです。
そして当たり前のことを当たり前にするためには皆さんも図書館のきまりを守らないといけないんですね。そう、当たり前のことを考えることも意味があるんです。
もし今のように、誰もが利用できる図書館が良いと思い、そのことを当たり前だと思うならば、その当たり前のことを守るために定められた図書館の貸出のルールやきまりを図書館を利用する人も守らないといけないんですね。当たり前のように思えることもみんなの努力によって当たり前になるんです。
5.皆さんには、当たり前と思えるきまりでも、その意味を自分の頭で考え、理解して、守ることの出来る、生きる力を持った中学生になってほしいと思います。そして、図書館を利用していろんな情報を身に付けて生きる力を持った大人になってほしいなって思います。
また、生きていくうえで、悩んだりしたら、図書館のことを思い出してください。
悩みを解決するヒントが必ずあるはずですよ。
八、まとめ
1.それでは、今日のまとめを書いてください。感想でもかまいません。←3分程度
2.あいさつ
それではいいかな?
それじゃあ、今日の話はおしまいです。協力してくれた行政書士からも代表してあいさつしてもらいます。『代表者あいさつ』
3.それでは、さようなら。