廃棄物処理法に関する法教育(授業内容)

第5回『北区法教育プロジェクト』授業原案
(廃棄物の処理及び清掃に関する法編)
「『きまりがあるのは何のため?』~きまりの意味を考えてみよう!~」
平成24年2月4日


一、はじめに(自己紹介)
1.はじめまして。行政書士の○○です。
行政書士は『頼れる街の法律家』といわれているように法律を扱う仕事をしています。
今日は皆さんと一緒に、荒川のゴミ問題をテーマに『きまり』について考える法教育の授業を行いたいと思います。よろしくお願いします。

2.それでは、私以外にも一緒に参加する行政書士にもあいさつしてもらいます。
3.『はじめまして、行政書士の△△です。今日はよろしくお願いします。』

 

 

二、主題の提示
1.それでは早速はじめましょう。
さきほど荒川のゴミ問題をテーマに授業を行いますと言いましたね。
皆さんは荒川には行ったことがありますか?
社会科見学なんかで岩淵水門や荒川知水資料館に行ったこともあるかもしれませんね。

また、学校やお家の近くだし、お家の人と一緒に散歩、サイクリング、またはバーベキューなんかをしたことがある人もいるかもしれませんね。

 

2.<昔の荒川について>(→余裕があれば写真等で視覚的支援)
皆さんは、荒川が昔どんな川だったか知っていますか?
これは知っている方が多いかもしれませんね。
昔は、荒ぶる川として氾濫が多かったこと、そのために放水路が出来たことなどを知っている人も多いと思います。

 また、学校の渡り廊下に貼ってあることから、江戸時代には、舟運、すなわち、船で荷物を運ぶのに利用されていたことを知っている人も多いかもしれませんね。

 川を利用し船で荷物を運ぶことは、車がなかったこと、また、重い荷物を運ぶのに便利だったこともあり、広く行われていたそうです。

(→舟運の資料を用意。戸田資料集(広重の浮世絵など))

 

 昔、人々は荒川の自然を利用し自然と共に生きる生活を送っていました。

 

3.しかし、今は皆さんも知っている通り、
日本でも世界でも自然減少の問題や環境問題がありますね。

学校の授業やテレビなどでも、『自然が減っている』、『環境が破壊されている』なんて言葉を聞いたことや、『自然や環境を守ろう』という運動があるのを知っている人も多いと思います。
皆さんは環境について勉強しているから知っていますよね?

 

4.さあ、昔は自然を利用し自然と共生していたのに、
なぜ今は自然が減って環境が悪くなったと言われるのでしょうか?

この理由についてはいろいろありますが、いくつかは皆さんも挙げられますよね。
授業で勉強したと思いますが、自然や環境の保護よりも、
工業化・宅地化を進め一か所に人がたくさん住むという都市化が進んだこと、そして、世の中が作っては捨てるという大量消費社会を通じた経済成長を優先していったこと、そのようなことから自然が失われ環境が悪化していったこと、が挙げられますね。<→余裕があれば資料>

そして、不幸な例として水俣病やイタイイタイ病などの公害が発生したことも授業で学習したと思います。


三、討論と発表
1.けれども、どんどん自然が減少したり、環境が悪化していくのを見て、おかしいな、何とかしなくちゃいけないなと思う人が出てきました。

そのための法律もあります。

 

さあ、これは環境に関する法律を集めたものですが、こんなにあるんです。
すごいですね。<→『環境六法』を示す。>

それでは、その中の一つを採り上げます。
プリントの●のついた廃棄物の処理及び清掃に関する法律と書いてあるものを見てください。

その■の印の付いた5条4項では、『何人も、公園、広場、キャンプ場、スキー場、海水浴場、道路、河川、港湾その他の公共の場所を汚さないようにしなければならない。』、  

また、16条には、『何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。』と書いてあります。

 

法律ですが、難しくないですね。
要するに、いらなくなったものだからといって自分勝手に捨ててはいけないということですよね。

そして、25条では、16条の規定に違反して廃棄物を捨てた者は『個人は、5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金』、そして、32条では、会社とかが行った場合には、3億円以下の罰金と書いてあります。

厳しいですね。
でも、1年半前までは、1億円でした。
しかし、不法投棄が減らないことから3億円として厳しくなりました。
(家庭ごみでも悪質な場合にはこの法律の適用があります。厳しいですね。
<→長野県の資料を提示>)

 

また、北区では、東京都北区路上喫煙の防止等に関する条例第10条で、赤羽駅の近くとか人が集まるところでたばこの吸い殻を捨てた人に対して、2千円以下の過料を科することができる、というきまりもあります。<→北区パンフレット>

 

こうやって国の法律や北区のきまりである条例でも自然や環境を守ろうとしています。
でも、皆さんは荒川清掃していますから不法投棄がなかなかなくなっていないことを知っていますよね。
 
2.皆さんも自然保護、環境を保護するために様々な活動を行っていると聞きました。

それではこれから、
①自然や環境を守るためにどんなことをしましたか?また、現在、どんなことをしていますか?

②これからもして行きたいと思うもの、また、他の人にも勧めたいと思うものはどんなことですか?

について、グループでいくつか意見を出して、その後で3つぐらいに絞って発表してもらいます。

 

それでは話し合いをはじめてください。

 

3.良いでしょうか?それでは順番に発表してもらいます。

 

 

四、きまりの意味を考えることの大切さについて
1.さあ、皆さんからいろいろな意見が出ましね。
今、皆さんが自然や環境を守るためにどんなことを行っているのか、また、これから行って行きたいかについて発表がありました。
皆さん、素晴らしいですね。
私も非常に参考になりました。私も行って行きたいと思います。

 

2.実は、今のように自然や環境を守るためというように、ある目的や理由のために、行動したりするということは、法律や皆さんの身の回りのきまりと似ているんです。

さきほど廃棄物の処理及び清掃に関する法律と東京都北区路上喫煙の防止等に関する条例の話をしましたね。

それでは、あれらの法律、条例のきまりの目的、理由は何だと思いますか?
ただ単に罰金を取ったりするためだけのきまりでしょうか?<→問いかけのみ>

 

3.プリント下の★印の
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第1条を見てください。
そこには『この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする』って書いてありますね。

 

難しく書いてありますが、『廃棄物、すなわちゴミをなるべく出さないようにして、キチンと分別したりして処理しましょう、生活環境を清潔にしましょう、そして、環境を守って衛生的な生活をおくりましょう、そういうことが目的です。』と書いてあります。

 

つまり、第5条や第16条の、公共の場所を汚したり、ゴミを勝手に捨てたりしないようにしましょう
というきまりはこういう目的、理由で定められていますよ、と書かれています。
しかも、1条ですから、はじめに書いてありますね。

 

北区の路上喫煙の防止等に関する条例についても、はじめの1条に『区民の良好な生活環境を保全し、
快適で住みよい地域社会の形成に寄与することを目的とする。』
と書いてありますね。(→余裕があればパンフを)

 

 

五、きまりを考える。
1.さあ、今日の授業は、「『きまりがあるのは何のため?』~きまりの意味を考えてみよう!~」
というタイトルでしたね。

 

今日、皆さんにお伝えしたかったのは、法律やきまりというと『〇〇したら罰金がいくら』、『〇〇してはいけません』、『〇〇したらしかられる。』ということだけを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、
法律やきまりは、ただ、罰を与えるため、単に守ってもらうだけにあるのではないということを知ってもらいたかったんです。

 

「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」というきまりが書いてある廃棄物処理法も
『生活環境の保全』、『公衆衛生の保全』という、その目的、理由が最初に書いてありましたね。

つまり、環境を守りましょう、きれいな町にしましょうという目的・理由があって、 そのことを実現するために様々なきまりがあるんですね。

 

法律やきまりには何のためにつくったか、何のためにあるのかという目的や理由があります。
法律やきまりは、その目的や理由をみんなに知ってもらいたいんです。
また、そのことをみんなに知って欲しいから一番最初に書いてあるんです。
そして、その目的を実現するために、様々なきまりがあるんです。

今日の授業では、そのことを皆さんに知ってもらいたかったんです。
きまりは単に罰を与えるためだけにあるのではないんです。
その目的・理由を伝えるためにも存在するんです。

 

2.そして、このようにきまりの目的・理由を考えて〇〇しようということは、
さっきの、環境を守るために〇〇しましょう、〇〇していきましょうというのと同じですね。

それだけでなく、皆さんの周りのきまりとも同じです。
(1)たとえば、廊下を走ったらいけませんというきまりの目的はどうでしょうか?
これって先生が廊下を走った人を叱るためにあるのでしょうか?
違いますよね、走って怪我しないようにですよね。
そうであるならば、階段もそうですし、駅のホームやエスカレーターでも

走らない方が良いって考えられますよね。

 

(2)それでは、休み時間にボールを蹴ったりしないようにしましょうというきまりについてはどうでしょうか?
これもボールを蹴った人を叱るのが目的のきまりですか?
なんだか変ですね。
そうですね、休み時間には1年生から6年生までみんながたくさんいて危ないからですよね。

 

(3)それじゃあ、みんなで行うことになっている荒川清掃についてはどうでしょうか?
これもみんながやるから自分もするものかな?
そうですね。環境を保護するためですよね。
そして、最初に皆さんに聞きましたね。荒川には良く行きますか?って。
そう、皆が良く行く、皆が楽しむ荒川だから、きれいだと気持ちが良いし、皆できれいにすると気持ちが良いよね。
そうすると皆で環境のことを考えられるよね。
そのために学校のみんなで清掃するって言うのもあるんじゃないかな?

 

3.さあ、今日の授業はきまりの意味を考えてみようという授業でした。
これから中学生になってからも皆さんは様々なきまりに出会うことと思います。
それらのきまりについて、ただ単に、言われたから、叱られるから、守るのではなく、なぜ、そのきまりがあるのか?という、きまりの目的、理由を考えられる人になってほしいということなんです。
そして、きまりの理由、目的を知って、守ることの出来る人になってほしい、ということなんです。

<余裕があれば★追加>

 

皆さんも、身の回りのきまりやルールについて、なんでこんなきまりがあるのかなって、自分自身の頭で考えて、きまりの目的、理由を知って、きまりを守れる、生きる力を持った中学生になってほしいと思います。

今日は、法教育の授業なので是非そのことを皆さんにお伝えしたかったんです。

 

 

六、終わりのあいさつ
1.それでは今日の授業はこれで終わります。
最後に今日のまとめや感想を書いてくださるとうれしいです。
是非お願いいたします。

 

2.手伝ってくれた行政書士の人からも一言あいさつしてもらいます。

 

3.それではおしまいです。

 

 


★追加資料(時間的余裕がある場合)
 実は、私達、法律家も法律を調べるときには、なぜこんなきまりがあるんだろう、このきまりの目的はなんだろう、って考えるんです。
 そうして、法律のことで悩んでいる人に、この法律は、こういう目的、こういう理由の法律だから、たとえきまりに書いてなくてもこうしたらどうですか?などとアドバイスをしたりするんです。
 そういうことを難しい言葉で、法解釈といいます。
 そして、こういうことを知っていると法律や身の回りにあるきまりの見方が変わりませんか?
 すなわち、きまりは『守らないと怒られるもの』、『何か窮屈なもの』というよりも、『みなさん、こういう理由のきまりですよ。みんなで一緒に守りましょう』ということを伝えるものと感じることが出来ると思います。
 法律は罰するため、守ってもらうためだけにあるのではないんです。その理由・目的を伝えるためにも存在するのです。